国内クレジット制度Q&A(制度概要、申請スケジュール)
1-1 国内クレジット制度
1-2 排出権(国内クレジット)の売却側の中小企業等のメリット
1-3 中小企業側が申請する動機
1-4 排出権(国内クレジット)の購入側の大企業等のメリット
1-5 排出権(国内クレジット)の売却側の中小企業等の要件
1-6 排出権(国内クレジット)の購入側の大企業等の要件
1-7 国内クレジットの特徴(審査)
1-8 事業審査
1-9 実績確認審査
1-10 実績確認審査を受ける間隔
1-11 国内クレジット申請のタイムスケジュール
1-11-1 国内クレジット申請のための必要書類
1-12 事業承認を得るまでの期間
1-13 国内クレジット売却収入を得るまでの期間
1-13-1 国内クレジット売却収入を受け取るまでの手続き
1-13-2 国内クレジット移転手続きの注意事項
1-14 CO2削減量の認証期間(国内クレジットの取引期間)
1-15 CO2削減量の認証期間(国内クレジットの取引期間)の2013年以降の延長の可能性
1-16 CO2削減量(国内クレジット)の数量の確定
1-17 CO2削減量(国内クレジット)の根拠となるデータ
1-1 国内クレジット制度
大企業等が技術・資金等を提供して、中小企業等が行った温室効果ガス排出抑制のための取組みによる排出削減量を認証し、自主行動計画等の目標達成のために活用する仕組み。
中小企業等がCO2を削減する設備を導入し、大企業等が、中小企業等が削減したCO2を、排出権(国内クレジット)として買い取る仕組み。
1-2 排出権(国内クレジット)の売却側の中小企業等のメリット
CO2削減量を排出権(国内クレジット)として大企業等に売却し、売却収入を得ることができます。
国内クレジット売却収入は、CO2削減量の実績に応じて、適当な間隔で得ることができます。
また、補助金と併用することも可能です。イニシャル(初期)で補助金を受けるとともに、ランニング(毎年)で国内クレジット売却収入を得ることができます。
1-3 中小企業側が申請する動機
国内クレジット制度は、『国内クレジットの認証がない場合に、当該排出削減事業が実施されないことに基づく性状があること』、いわゆる『追加性』があることを要件としているように、中小企業側に、国内クレジットを申請するための動機が必要です。
これまで、承認された事例では、中小企業は次のような動機で、国内クレジットを申請しています。
①国内クレジットを大企業等に売却することに得られる収入で、投資の回収期間が短くなる。
②CO2削減の取り組みを対外的にアピールできる
1-4 排出権(国内クレジット)の購入側の大企業等のメリット
これまで、大企業等が購入する排出権は、海外産の排出権が中心で、海外に資金が流出していました。国内クレジットは国産の排出権のため、排出権の購入資金は国内に落ち、日本経済の成長に寄与することができます。また、地球温暖化対策の支援資金の提供先(国内の中小企業等)が身近な企業になるため、環境貢献や社会貢献の意義をより強く感じることができます。
1-5 排出権(国内クレジット)の売却側の中小企業等の要件
業界団体が策定しているCO2排出量の削減目標(自主行動計画)に参加していないこと。
中小企業等が義務的なCO2排出量の削減目標を課せられていないことです。
1-6 排出権(国内クレジット)の購入側の大企業等の要件
特にありません。
国内クレジットは、CO2削減の自主行動計画の目標達成以外の自主的な環境貢献、いわゆるカーボンオフセットとしても利用できるため、購入者は大企業である必要はありません。また、自己で国内クレジットを利用しない仲介業者でもかまいません。
1-7 国内クレジットの特徴(審査)
CO2削減量を貨幣価値のある権利として取引するために、審査を受けなければなりません。
この審査は2種類あり、それぞれ、民間企業等の審査機関と経済産業省に設置された有識者で構成される国内クレジット認証委員会による2重の審査を受けなければなりません。
審査を行うことができる審査機関は、経済産業省に承認された審査機関のみです。
審査は、排出削減事業として承認する事業審査と、排出削減事業が削減したCO2を国内クレジットとして認証する実績確認審査の2種類があります。
1-8 事業審査
最初のみ受ける審査です。排出削減事業が、国内クレジットの要件に合致しているか、排出削減計画はルールに沿って作成されているかなどの審査を受けます。排出削減計画では、事業のCO2削減量を計算しますが、あくまでも予測値であり、この時点では、売却できる国内クレジットの量は確定されません。
1-9 実績確認審査
2013年3月31日まで、数回受ける審査です。実測・計算されたCO2削減量が正しいかどうか、CO2削減量の根拠資料は正当なものかなどの審査を受けます。この審査でCO2削減量が認証されれば、認証量を大企業等に売却し、大企業等から国内クレジット売却収入を得ることができます。
実績確認の計算期間は、特に定められていませんが、審査費用との費用対効果を考えることが必要です。
1-10 実績確認審査を受ける間隔
実績確認審査は、2013年3月31日まで、1回でも、何回受けても構いません。
回数を少なくすれば、審査費用を削減できます。ただし、回数が少ないということは、データ収集する期間も長くなるので、CO2削減量の計算の根拠資料を紛失したり、根拠資料の収集方法が誤っていた場合には、長い期間のCO2削減量が国内クレジットとして認められなくなるリスクが大きくなります。
そのため、慣れるためにも、1回目の実績確認審査は、1年後ぐらいに実施し、ノウハウを習得すれば、次の審査までの間隔は数年と長くても良いと考えられます。
1-11 国内クレジット申請のタイムスケジュール
現時点では、既に設備が稼働した案件も申請できるので、必ずしも、次のようなタイムスケジュールで行われていませんが、④以降はおおむね次のようなスケジュールで行われます。
①中小企業等が設備投資を検討
②中小企業等が国内クレジットの活用を検討
*任意で、専門家に相談し、国内クレジット申請の効果(国内クレジット売却収入、PR効果)を確認
③中小企業等が国内クレジットの認証を前提として設備投資を行うことを最終決定
④設備工事開始
*設備投資は⑧の国内クレジット認証委員会の審査の後でも良い。
⑤排出削減事業計画を作成
*任意で、専門家に作成の支援を依頼
⑥国内クレジットの購入者(共同実施者)を決定し、国内クレジット譲渡契約を締結
*任意で、専門家に共同実施者の選定の支援を依頼
⑦審査機関の事業審査を受ける
*任意で、専門家に審査対応の支援を依頼
⑧国内クレジット認証委員会の事業審査を受ける
⑨中小企業が、一定期間、設備を稼働し、その期間内のCO2削減量を計測するためのデータをそろえる
⑩排出削減実績報告書を作成
→任意で、専門家に作成の支援を依頼
⑪審査機関の実績確認審査を受ける
→任意で、専門家に審査対応の支援を依頼
⑫国内クレジット認証委員会の実績確認審査を受ける
⑬中小企業は国内クレジットを譲渡し、大企業は譲渡量相当の譲渡金額を支払う
2013年3月31日まで、⑩~⑬を数回繰り返す。
1-11-1 国内クレジット申請のための必要書類
①審査機関の事業審査(1-11における⑦)
排出削減事業計画を審査機関に提出
②国内クレジット認証委員会の事業審査(1-11における⑧)
(A)国内クレジット制度 排出削減事業承認申請書(2枚紙)
【中小企業の社印及び担当者印、共同実施者(クレジットの買い手)の社印、その他関連事業者の社印の押印が必要】
(B)排出削減事業計画
【中小企業の社印、共同実施者(クレジットの買い手)の社印、その他関連事業者の社印の押印が必要】
(C)審査機関が発行した国内クレジット制度審査報告書
(D)誓約書
(A)、(B)は原本とコピー1部。(C)はコピー2部を提出。原本は中小企業側で保管。(D)は原本1部。
③審査機関の実績確認審査(1-11における⑪)
排出削減実績報告書を審査機関に提出
④国内クレジット認証委員会の実績確認審査(1-11における⑫)
(A)国内クレジット制度 国内クレジット認証申請書(2枚紙)
【中小企業の社印及び担当者印、共同実施者(クレジットの買い手)の社印の押印が必要】
(B)排出削減実績報告書
【中小企業の社印、共同実施者(クレジットの買い手)の社印、その他関連事業者の社印の押印が必要】
(C)審査機関が発行した国内クレジット制度実績確認書
(A)、(B)は原本とコピー1部、(C)はコピー2部を提出。原本は中小企業側で保管。
1-12 事業承認を得るまでの期間
⑤の排出削減計画作成から、⑧の国内クレジット認証委員会の承認を得るまでの期間は、早ければ、2カ月程度です。
1-13 国内クレジット売却収入を得るまでの期間
一般慣行としては、設備稼働してから1年後以降に、最初の国内クレジット売却収入が入ってきます。
国内クレジットを譲渡する際には審査費用が発生するため、得られる国内クレジット売却収入と審査費用の費用対効果を考えると、設備稼働から1年後以降に、実績確認の審査を受けることが適当と考えられます。
1-13-1 国内クレジット売却収入を受け取るまでの手続き
①国内クレジット認証委員会に対して、国内クレジット認証申請書を提出
↓
②国内クレジット認証委員会において、国内クレジットを認証
↓
③委員会開催同日、国内クレジット認証委員会事務局が、国内クレジットを発行し、共同実施者の国内クレジット口座に移転
↓
④委員会開催およそ1週間後、国内クレジット認証委員会事務局が、共同実施者に対して、国内クレジット移転通知を発行
↓
⑤国内クレジット譲渡契約に基づいて、共同実施者が排出削減事業実施者に対して、譲渡代金を支払い
(注)共同実施者が譲渡代金を支払う時期は、譲渡契約によって、1ヶ月後や月末などさまざま。
1-13-2 国内クレジット移転手続きの注意事項
国内クレジット認証委員会で、国内クレジットが認証されると、共同実施者の口座に国内クレジットが直接移転され、共同実施者は国内クレジットを受け取ることになります。
そのため、次のような注意事項があります。
①複数の共同実施者で、排出削減事業の承認を受けている場合には、どちらが、また、どのような配分で、国内クレジットを受け取るか、国内クレジット認証申請までに決定しておくこと。
②国内クレジット認証委員会開催日までに、共同実施者の口座を開設しておくこと。
③国内クレジット認証委員会開催日までに、国内クレジットの譲渡対価、譲渡代金支払日などの契約条件を合意しておくこと。
特に、③の合意を怠った場合には、共同実施者は国内クレジットを不当利得することになるため、特に、注意が必要です。
1-14 CO2削減量の認証期間(国内クレジットの取引期間)
2013年3月31日までです。
2008年4月1日から設備を本格稼働した場合には、最大で5年間となりますが、これから稼働する設備は認証期間が短くなります。
なお、京都議定書のルールのCDMの認証期間は、最短で7年となっております。7年経過した時点で、排出権として資金支援すべきかどうか審査し、例えば、設備投資が回収できている場合などは、以降は排出権として取引できなくなります。依然として、排出権として資金支援すべきプロジェクトと判断されれば、最大で21年間、排出権を売却することが可能です。あるいは、10年で認証期間を固定することも可能です。
1-15 CO2削減量の認証期間(国内クレジットの取引期間)の2013年以降の延長の可能性
国内クレジット制度は、日本政府の京都議定書達成計画に基いた制度のため、京都議定書のCO2削減目標期間と関連しています。現在、2013年以降の地球温暖化対策のポスト京都の枠組みが話し合われていますが、国内クレジット制度の延長もポスト京都の枠組み次第になる可能性があります。一方で、EUや東京都のように、国際的な枠組みとは別に、地域における独自の2020年までの削減目標を設定する場合があるため、国内クレジット制度もポスト京都の枠組みと別の仕組みになる可能性も考えられます。
1-16 CO2削減量(国内クレジット)の数量の確定
導入した設備のエネルギー使用実績に基づいて、CO2削減量が確定します。
例えば、都市ガスボイラへ更新した場合には、都市ガスの使用量などの実績に基づいて、CO2削減量を計算します。
1-17 CO2削減量(国内クレジット)の根拠となるデータ
CO2削減量の実績は正確なデータに基づいて計算される必要があります。 原則、エネルギー供給会社など第三者が記録したデータや測定機器のデータが必要となります。例えば、都市ガスボイラへ更新した場合には、都市ガス会社からのガス料金の請求書がデータの根拠となります。
そのため、CO2削減量の実績の計算の根拠となるデータを記録する方法がなければ、明らかに、CO2を削減している設備であっても、CO2削減量を国内クレジットとして取引できません。